Let me beam your waifu up!

二次元キャラクターを移住させる方法……みたいな内容です、たぶん

有料アバターは売れるのか?

たぶん、売れにくいと思う。アバターの総利用者数と、販売されるアバターの種類の総量によって、変動するだろう。

その理由は、たとえ金を出しても、同じ商品を買った人は必ず周囲に居るから。そうであるなら、無料のアバターの代用やアップブレードの役割としてはまるで不足だから、である。

アバターを纏って交流する人々の生活圏が巨大化すると、同じアバターを着ている人がかち合う確率が高くなる。そうすると、顧客(ユーザー)は個性やアイデンティティーの見た目が保てなくなるので、商用アバターでは不足に感じる機会が多くなる。

インディーの商用アバターを利用したり、スキルのオーダーメイドマーケットで専用アバターを作らせたり、買ったりということもできるが、需要によって「店」の数が変わる。店の数が少なければ、やはり似たり寄ったりとなる。また、マタイ効果(※)によって人気のある店が繁盛しても、結果は同じで、似たり寄ったりのアバターが多くなる。
※マタイ効果……格差は増長する傾向があるという原理。人気者はますます人気者に、日陰者はまるで日が当たらない、という現象のこと。

カスタマイズ可能なアバターを提供するサービス(例えばpixiv)とメタバースの提供元(VRChat)が提携する可能性もあるが、現在は過渡期だ。VRChatの場合では、サードパーティー(個人提供)のフリーツールによって、MikuMikuDanceユーザーモデルをアバターに変換することが可能だったが、倫理上タブー視された。VRM形式(VRoid含む)をVRChatで利用する要望もあるが、まだ実現されていないようだ。

カスタマイズできるキャラクターについては、各社が別々のプラットフォームで、こぞって先駆的な仕様を利用可能にしている。ところが、これらが一堂に会する――共有のプラットフォームで実装される――ことは現状では難しいか、もしくはそうした動きが活発ではない。

アバターは、まだプラットフォームという場所に縛られる。どのプラットフォームでも同じアバターを纏う、というわけにはいかない。

またインディーレーベルの立場からすると、長いものに巻かれる(VRoid Studio)ことで商機を得る者もいれば、大手の参入(コトブキヤ)によって、機会を奪われると感じる者もいる。いずれにせよマタイ効果が働くので、有名どころの利用者数は今後も増加するが、中間層から無名のクリエイターは見向きもされない。母数が大きければ大きいほど無名のクリエイターが露出する確率は高まるに違いないが、それでもクリエイターが皆、おしなべて利を得ることはない。格差は増長し続けるからである。

顔をPVCフィギュア的な造型にすることで生まれる利益

私がご提案いたしますのは、立体として正しい、萌え顔の造型です。

 

我々オタク系モデラーが目指す次のベクトルとして、萌えテイストを限りなく無理のない造型で3D化するという使命があります。

私が思うに、最初の着地点は、PVCフィギュア原型とデジタルアバターの折衷といった辺りです。ドール的な顔立ち、とも言えるでしょうか。

ドールというのは、一般的な1/7サイズのPVCフィギュアよりも大きめな、布製の衣装を着せて愛でることを主眼にした人形です。関節には球体関節が嵌まっており、可動フィギュアほどではないにしろ、動かすことができます。いわゆるフランス人形の類いですね。

 

ドールはカスタマイズの方向性で発展しているようです。メーカー側はオーナー毎に違う個性を持たせようとしており、パーツに多様性を設けた商品展開をみることができます。同じメーカーの同じブランドでも多数のオプションがあるのです。

 

ところで、無理なく3D化した萌え顔にはよいことがあります。ひとつ目は、リアルな環境光でも遜色なくレンダリングできるだろうということです。流行のCycleレンダーでは、デジタルアバターがPVCフィギュアか、さもなくばドールっぽく再現されます。テクスチャーを極めていけば、なかなか面白い表現になりそうです。

 

二つ目は、PVCフィギュアの立体物として転用がしやすいのではないか、ということです。目の処理以外では。

 

目に関して、デジタルアバターの世界でもいろんな再現方法がありますね。「窪みの白目に浮かぶ瞳」は代表的な手法だと思います。これが現実世界になると、PVCフィギュアの世界ではタンポ印刷でした。30cm前後(1/6サイズ)の関係から手頃な処理ということなのかもしれません。

 

プラモデルの世界では、多色成形がタンポ印刷に取って代わる様子を見ることができます。

 

古典的な錯覚トリックに「すり鉢状の白目」というものがあります。どの角度からでも見つめてくる瞳がそれです。デジタルの世界でも、この原理を応用することがあります。固定ポーズのアバターに使うと、カメラをどのアングルに向けてもこちらを見てくる不思議なキャラクターになります。カメラを追尾する視線といった仕組みが使えない場合には有用です。

同じ原理はPVCフィギュアにおいても活用されています。

 

ドールの分野でもこの「追視アイ」は応用されています。すり鉢状の眼球は透明な眼球の底(まさに眼底の位置)に相当し、透明な樹脂製の「角膜」がドーム状の被い(つまり半球体の薄い凸レンズ)として存在することで、ぱっと見の不自然さも軽減されています。このようなシステムにおいては、デジタルアバターをフィギュア原型に転用する=変換することも比較的容易になるのではないかと想像します。

 

リアルで通用する三次元的な造型をしていくことは、相応の可搬性(portability)を生むことだと言えます。